たいていの赤ちゃんは、生後9ヶ月ころになると腹ばいで前進することができるようになりますが、中にはお座りの姿勢のまま、お尻を少しづつずらして前に進む赤ちゃんもいます。
これを「ずりばい」あるいは「座りばい」といいます。健康な赤ちゃんでも10人に1人か2人ぐらいにみられますから、それ自体なにも心配する必要はありません。
しかし座りばいをする赤ちゃんの中に、1人立ちや1人歩きの時期が目立って遅れる子供がいます。シャフリングチルドレン(Shuffling children)と呼ばれています。
シャフリングは、そのものずばり「ずりばい」「座りばい」を意味する言葉ですが、このような状態を「解離性運動発達」といっている人もいます。解離性というのは、ガラガラを手で持って遊ぶとか、近くにある物をつかむというような手先の細かい運動の発達に比べて、ハイハイや歩くというような大きな運動の発達が不釣合いに遅れている赤ちゃんを示すものです。
このような「ずりばい赤ちゃん」は、生後半年くらいの間はうつぶせにされることを嫌う傾向にありますが、首のすわりや手先の動きなどは正常に発達します。
また1歳ごろになっても、支えなしでは1人で座ることができない赤ちゃんがいます。この子は、わきの下を支えて立たせようとしても足がつかず、空中で足を前方のばして「空中で腰掛けいるような姿勢」をとります。
そしてやっとお座りができるようになったかと思うと今度は「ずりばい」が目立つようになります。
このような「ずりばいの赤ちゃん」が、どのような経過をたどるのかを調べてみると、
支えなしに一人で座ることができるようになるのは、普通の赤ちゃんの6~8ヶ月に対して8~13ヶ月、ずりばいをはじめる時期は13ヶ月前後で、その持続期間は平均7ヶ月、一人で10歩以上歩けるようになるのは17ヶ月から24ヶ月で、普通の赤ちゃんに比べてかなり遅くなります。
しかし運動発達が遅れる以外はまったく正常で運動の遅れもやがては取り戻されます。将来運動能力が低いといったこともありません。それにしても、なぜこのような風変わりな運動発達をするのか、その原因についてはよくわかっていません。ただずりばいの赤ちゃんの両親や兄弟にずりばいの頻度が高いこともあり、なにか遺伝的な原因が関係しているようです。
いずれにせよ「ずりばい赤ちゃん」は、定期的な検診によって発達の状態を注意深くフォローしてゆく必要があります。