赤ちゃんが泣いたときに泣き止ます手段として、おしゃぶりを使用する母親がみられます。最近特に「おしゃぶりは舌やあごの発達を助けて鼻呼吸を促す」という宣伝文句やフォルダーを付けたファッション性が受けてか、おしゃぶりが流行しているようです。
しかし、おしゃぶりを長期に使用すると乳歯のかみ合わせに悪影響を与えるという報告も多く見られます。おしゃぶりの使用について現在はどのように捉えられているのでしょう。
この問題を考える前に、まず乳児期のしゃぶるという行動について考えてみましょう。
指しゃぶりがいつごろからみられるかというと、赤ちゃんがお母さんのお腹にいる胎生15~16週(体長12センチぐらい)頃から観察されます。すでにこの頃から哺乳のための準備が開始されているわけです。胎生28~32週頃には吸てつ、嚥下反射が確立されます。実際この頃には羊水をさかんに嚥下しており、これが赤ちゃんの肺の成熟に欠かせない刺激となっています。
前にも述べましたが、新生児は、反射により哺乳することが主体となりますが、生後2~3ヶ月になり手足の動きが活発になると。口許に触れた手や足を反射的にしゃぶるようになります。指しゃぶりには手と足の協調運動を促すという発達的な意義も大きいわけです。
4~5ヶ月になって、物がつかめるようになると、しゃぶる対象は指から身の回りの物や玩具などに広がってゆきます。さらにお座りやはいはいができるようになると、興味のあるものをとりあえず口に入れてどういうものか確かめることをします。この時期もっとも感覚が鋭いのは唇や舌の感覚です。タバコの誤飲などの事故は、この時期多く、お母さんにとってもっとも目を離してはいけない時期といえます。
1才を過ぎて、離乳の完了や卒乳を迎えると、指しゃぶりは精神的な安定を求めるための行為となっていきます。この時期の母乳や哺乳瓶の使用は、子どもがぐずった時や、就寝前に眠りをスムーズにするために行われることが多くなります。1~2才では、まだ言葉で自分の気持ちをうまく表現することができないので、指しゃぶりなどにより感情のコントロールをしているとも考えられます。
3~4才になり、言葉で自分の気持ちを表現したり、言葉をかけられることで安心が得られたりすると、指しゃぶりで不安をまぎらわす必要もなくなり、仲間遊び、外遊びが盛んになると、一人遊び的な指しゃぶりでは満足できなくなり、5才ごろには自然と指しゃぶりはなくなってゆきます。