子どもたちが受ける健康被害について、十分なエビデンスに基づいて受動喫煙との関連が 証明されている疾患として、乳幼児突然死症候群、気管支喘息、呼吸器感染症、中耳炎 があげられます。
SIDSは近年徐々に減ってきていますが、今でも年間150人前後の赤ちゃんが亡くなって おり、妊娠中の母親の喫煙と出産後の乳児の受動喫煙が重大なリスクファクターと なっています。我が国の調査では、両親がともに喫煙していると、リスクが4.7倍に 増大すると指摘しています。英国の報告によると、妊娠の受動喫煙で3.9倍、乳幼児 の受動喫煙で3.5~15.8倍にリスクが増悪するとしています。
受動喫煙によって、子どもの気管支粘膜の絨毛が傷つくことで炎症が起こりやすくなり、 気道の過敏性も亢進します。それにより、気管支喘息、気管支炎、肺炎などの呼吸器 疾患にかかりやすくなるだけでなく、重症化すしやすくなることが知られています。 気管支喘息の発症オッズ比は、父親のみが喫煙している場合は1.07、母親のみで 1.33、両親とも喫煙している場合は1.42と報告されています。
子どもの中耳炎についても、受動喫煙によってリスクが、1.5倍に増大することが
明らかになっています。受動喫煙によって咽頭に入ったタバコの煙が耳管を通って
中耳まで侵入し、耳管内部の絨毛が障害されることや、中耳内部の局所免疫が低下
することが主な原因とされています。
これら以外に、現在、受動喫煙との関連が強く疑われている疾患として、小児がん
、動脈硬化、血清脂質異常、虫歯、精神発達障害などがあります。
子どもの受動喫煙は、知能の発達に悪影響を及ぼすとの報告もあります。 米国で小中学生4,000人余りに読解力や計算能力テストを実施した調査によると、 家庭での受動喫煙の程度が強い生徒ほど試験点数が低かったとしています。 (図) さらに最近、受動喫煙が子供の精神障害のリスクを高めるとの報告もあり、うつ病 不安障害、注意欠如多動性障害(ADHD)などとの関連が指摘されています。