「くる病」は古くて新しい病気
栄養不足の時代に多かった乳幼児の「くる病」が最近増えてきています。2013年10月NHKニュース、おはよう日本でも紹介され話題となりました。
日本では、戦後の一時期などに見られましたが、食糧事情の改善とともに姿を消し、過去の病気と思われてきました。ところが20年ほど前から
ぽつぽつ見られるようになり、最近は時々みられるほど増えてきています。その発症に大きく関わっているのが、血液中のビタミンDです。
ビタミンDは、食べ物から栄養として摂取したり、皮膚に紫外線を受けて体内で合成されます。
子どもの手足の骨は、骨の幹の部分とその先端にある軟骨の部分からできており、その境の部分にカルシウムやリンが沈着して骨となり、
骨が伸びて成長します。ビタミンDは骨にカルシウムやリンを沈着させる働きがあり、不足すると骨がうまく形成されず、背ののびが悪く
なったり、下肢の骨が曲がり極端なO脚(がにまた)になります。これが「くる病」です。最近増えてきた背景には、近頃の子育てを取り
巻く環境の変化があるようです。
くる病増加の3つの要因
- 母乳栄養
母乳栄養はさまざまな長所がありますが、母乳中のビタミンDの含有量は、ミルクに比べ極端に少なく、母乳だけでは赤ちゃんに
必要な量の半分程度しかとることができません。母乳のみではビタミンDの必要量を摂取することは不可能であり、症状がでていなくても
多くの母乳栄養児はビタミンD不足状態にあります。実際にくる病の子どもは、ほとんどが完全母乳栄養児におこっています。
しかしながら母乳中のビタミンDは、吸収率が良いこともわかっています。また赤ちゃんは、胎児期に体内に蓄えられたビタミンDがあるので、
母乳栄養であるからすぐにくる病を発症するわけではありません。まずお母さんが栄養バランスの良い食事を心掛けて、ビタミンDの多い食品
(卵黄、魚、干ししいたけなど)を積極的にとり、生後5か月くらいから離乳食を開始し、1歳半頃までは母乳だけでは不足しがちな栄養を
食事から取れるようにすることがとても大切です。
- 日光浴の不足
最近、紫外線の害に過敏になりすぎ、赤ちゃんにも日光浴を避ける傾向がみられます。ビタミンDは、皮膚で紫外線によってコレステロール
から合成されるので、日光浴をしないとビタミンDは生成されません。血液中のビタミンDは、食事からは10%以下、紫外線による皮膚で
生成される量が90%以上という報告もあります。特に寒くなってくると外に出る機会が減りますが、ガラス越しの日光浴でよいのです。
1日10~15分間、両手、顔だけでも日にあたるだけで十分量のビタミンDが合成されるといわれていますが、北海道では30分くらいの日光浴が勧められます。