夏に流行する感染症としては、ヒトからヒトに感染して子どもの間で広がってゆき、保育園や 幼稚園で集団感染しやすいものや、主に食物によって食中毒という形で発症するものがあります。 主に学校、幼稚園、保育園を中心に流行する疾患として、ヘルパンギーナ、手足口病、プール熱 などがあげられます。これらは「夏かぜ」の一種としてとらえられています。
医学的に「夏かぜ」という言葉はありません。冬にかかる一般的なかぜに対して、夏にかかる かぜを慣習的に「夏かぜ」といっています。いずれにせよかぜは、ウイルスがのどや鼻の粘膜 から侵入することで起こります。かぜの原因となるウイルスは、200種類以上あるといわれて います。冬は低温や乾燥を好むコロナウイルス、ライノウイルス、かぜではありませんが インフルエンザウイルスなどが主体で、これに対し夏の代表的なウイルスは、アデノ、エンテロ コクサッキーウイルスなどがよく知られています。これらは、高温で湿度が高い環境を好むこと 、経口感染すること、腸で増殖することなどの特徴を持っています。
エアコンの使用などによる急激な室内外の気温や湿度の変化は、自律神経のバランスをくずし やすくします。暑さによる寝不足、夏バテによる食欲不振などによって、人によってはかぜの 流行する冬よりもむしろ夏にかぜをひきやすいという人もいます。夏の暑さによる体力の消耗が 激しい状態でかぜをひくとお腹にくることも多く、冬のかぜに対し治りにくいという印象があるかも しれませんが、その根拠はなさそうです。かぜに効く薬はありません。安静と睡眠、水分補給を 十分にし、解熱鎮痛剤をうまく使用することも有用です。
小児の代表的な夏かぜであるヘルパンギーナ、手足口病、プール熱について次回述べてゆきましょう。