母乳は、赤ちゃんが健康に育つのに必要なすべての栄養素をバランスよく含んでいます。さらに、人工乳にはどうしてもまねができない、免疫システムを強化するためのたくさんの物質が含まれています。
生まれて最初の乳汁から数日間のおっぱいを初乳と呼びます。量は少なく黄色味がかっていますが、タンパク質の量が多く、赤ちゃんにとって消化しやすくなっています。
この初乳中には、とくに免疫物質(IgA、貧食細胞、ラクトフェリンなど)が大量に含まれており、生まれたばかりで抵抗力のない赤ちゃんをさまざまな感染症から守ってくれています。この量は次第に減少してゆきますが、おっぱいをたくさん飲んでいる10ヶ月くらいまで含まれています。
初乳は徐々に成熟した乳汁に変わってゆき、赤ちゃんの発育とともに量が増えてゆきますが、それとともにタンパク質の濃度が減少し、乳糖と脂肪が増加します。母乳中には、脳細胞の発達に不可欠なアミノ酸であるタウリンやその他の多くの必須アミノ酸が、すべて目的にかなう量で分泌されています。
カルシウムやリンも理想的な比率で十分量含まれており、さらに微量元素である亜鉛、銅、マンガンなども疾患予防に大きく役立っています。
未熟児を産んだお母さんの初乳には、特に高い濃度のタンパク質と特別な形の脂肪が含まれています。その後も未熟児が育ちやすいように高いタンパク質濃度の母乳が出ています。同じ母乳でも赤ちゃんが育ちやすいように母乳の組成も変化しているんですね。
未熟児を産んだお母さんは、退院後も母乳を搾乳して病院に届けて、わが子に飲ませています。特に小さく生まれてしまった赤ちゃんには、生後しばらくの間は母乳だけで育てられます。これをみても、いかに母乳がお腹にやさしいかがわかります。
なお赤ちゃんが1歳を過ぎて与える母乳は、脂肪がやや少なくなるだけで栄養的にはなんら変わりません。薄くなってしまうのではという心配は無用です。いっぱい飲ませてあげてください。