スマホは、発達過程にある子どもの目にどのような影響を与えているのでしょう。
図に示すように、視力が1.0未満の子どもが増えてきています。スマホを使用すること自体が視力低下 の直接的な要因ではありませんが、長時間にわたって小さな画面を見続けてしまうことが近視の原因と なります。目で何かを見るときには、対象物の距離によって目の筋肉がピントを合わせます。スマホを 一定の距離で見続けていると、そこばかりにピントが合うようになり、目の筋肉が緊張したままの状態 が続き、目に疲労が蓄積し、最終的に視力が低下してしまいます。とくに視力発達のゴールデンタイム と言われている6~8歳くらいまでの時期に、スマホを20cm以下の至近距離で長時間見ると視力発達に 大きな影響を与える可能性があります。
短時間に目が内側に寄る「急性内斜視」になる子どもが増えています。悪化すると文字や物が二つに 見える「複視」の症状が出るため、学校生活や日常に支障をきたします。目は近くを見るときは 通常でも少し寄り目になりますが、目との距離が近いデジタル機器はさらに寄り目になります。 長時間使用するとその状態を正常(まっすぐ)と脳が誤認識し、なお斜視のままになってしまうと 考えられています。また片手操作をする人は、左右どちらかに傾けて使用していると左右の目から スマホまでの距離に差ができるため、目のバランスが崩れ、急性内斜視の原因になります。 急性内斜視は、10~20歳代に多く、物が二重に見える症状が現れます。片目だと複視にならないため、 片目をつぶり続ける子どもを見て、親が気が付くこともあります。
近くにピントを合わせるとき、目の筋肉(毛様体筋)が緊張し、水晶体が厚くなります。スマホを 長時間見続けると緊張した筋肉が元に戻りにくくなり、ピント合わせが困難となります。「スマホ 老眼」といいます。目を休めることで回復しますが、小さなお子さんでは回復までに時間がかかる ことがあります。
まばたきは、3~5秒に1回必要なのですが、スマホのゲームや画面に集中すると、まばたきが減って 涙が不足しやすくなります。目が乾き、疲れたり、かすんだりするドライアイの原因になります。
新型コロナウイルスの感染が拡がり、小中学生が外出せず家にいる時間が増えています。スマホや タブレット端末を使用する時間が長くなっており、目の「オンライン」疲れが心配になります。 視力だけではなく、遠くを見てもすぐにピントが合わず、ぼんやりしてしまう調節障害や目が内側 に寄る内斜視にも注意する必要があります。とくに物が二重に見えるような症状があるときは 早めの眼科への受診が必要となります。