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北見小児科医師が書いた子育てアドバイス

こどもとスマホその⑥ スマホと脳機能

便利で身近な存在になっているスマホですが、1日2時間以上使用すると、前頭前野が活発に働かなくなることが分かってきました。前頭前野は、脳の中でも人間らしい思考や判断をし、記憶や感情制御をおこなう場所で、3歳までに3倍の大きさに成長します。前頭前野は、私達が生活するうえで一番大切な人間らしさを育む司令塔です。

大人を対象としていますが、興味深い実験があります。(東北大学、川島先生)

図は、少し難しい言葉の意味(例えば忖度など)を紙の国語辞典で調べたとき(上)と、スマホを使用しウィキペディアを閲覧して調べたとき(下)の前頭前野の活動を示しています。国語辞典を使用した際は時間内に3つ、一方スマホを用いると5つもの言葉の意味を調べることができました。前頭前野の働きを比べてみると驚くべきことに国語辞典を使っているときは左右の前頭前野は活発に働いているのに、スマホを使うと全く働いていないことがわかりました。スマホで言葉調べをしているときには指先も使っているし文字だって読んでいるのに、前頭前野は全く活動していません。作業効率がいいのはスマホを使用した時ですが、前頭前野はボンヤリしたままなのです。

また、文章を書くときの実験でも、手書きで手紙を書くと前頭前野はたくさん働くのに、パソコンやスマホで文章を書かせても前頭前野は全く働かないという結果がでています。

ちなみに、前頭前野の活動に抑制がかかるのはスマホ使用時に限ったことではありません。ゲームやテレビ視聴も同様であり、長時間のプレー、視聴は、言語知能の発達に悪影響を及ぼすとともに、脳の発達、とくに前頭前野の発達に遅延を生じさせることが、健康は学童の経年変化をみたMRI計測から明らかになっています。

川島先生は、次のようにコメントし、長時間のスマホ利用に注意を呼びかけています。

前頭前野が発達していることが、ヒトの脳の最大の特徴であり、前頭前野には人間ならではの「こころ」の働きが局在しています。子どもの脳の健全な発達を考えると、前頭前野の機能を活発に働かせる機会を多く持たせることが大切になります。しかし、便利なスマホを頻繁に用いると発達期の子どもたちが脳を使う機会がどんどん奪われることになります。前頭前野を使う『use it』の機会が減り『lost it』が進んだ子どもたちは、将来どうなるのか。そのことを私たちは真剣に考えなくてはならない時が来ていると思います。

図)言葉調べをしている時の前頭前野の活動

小児科コラム

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