今、話題の「乳児用液体ミルク」を知っていますか?
液体ミルクとは、ボトルや紙パックに液体状でミルクが入っているものです。無菌状態で常温で保存されて いるので粉ミルクのように湯で溶かし冷やす必要がなく、そのまま飲ますことができます。欧米では粉ミルクと 同様に市販されていますが、これまで日本では販売されていませんでした(個人輸入は可)。
最近とくに注目されるようになったきっかけは、2011年の東日本大震災です。
当時、被災地で緊急避難してきた母親と子どもを収容する避難所では、乳児の栄養を確保する上で大きな課題が 生じました。母乳による哺乳を続けることが困難な乳児、あるいはミルクで哺育中の乳児には、乳児用ミルクを 緊急に確保することが最大の使命となったのです。しかし粉ミルクから乳児に投与可能なミルクを調整するには、 湯を沸かす熱源、水、乳嘴(乳首)と哺乳瓶が最低限必要です。そのため、多くの避難所ではミルクを用意する ことができず、避難所の棚には多数の粉ミルクの缶が使用できないまま並べてある状況でした。とくに熱源の 確保が最大の問題だったようです。一方、液体ミルクは容器自体が哺乳瓶の役割を果たし、乳嘴も付いています。 このように乳児にそのまま使用可能な液体ミルクは、大規模災害時における乳児栄養の緊急確保に備え、 常時備蓄しておくべき物品の一つとして脚光を浴びました。
その理由は、厚労省の省令で、母乳代替食品は粉ミルク(調整粉乳)しか認めていないからです。 省令では、粉ミルクの成分規格として「水分5%以下」と規定されています。したがって日本の乳業メーカー が液体ミルクを製造して販売することは不可能でした。
さらに2016年の熊本地震を経て、大規模災害時の乳児栄養として液体ミルクを緊急に使用できるよう、 あらかじめ体制を整備しておく必要性が強調されることになりました。事実、これまでに小児科学会を はじめとした関連学術団体や、母親を中心とした消費者団体が、緊急時に備えた液体ミルクの備蓄と利用に ついて複数回にわたり、政府に要望をしてきました。これらの動きに答える形で、厚労省は2018年8月8日、 乳児用液体ミルクの国内での製造、販売を可能にする規格基準を定めた改正省令を交付しました。これにより、 今後は国内メーカーが商品化できるようになり、すでに国内粉ミルクメーカーなどが製造に乗り出す見通しとなっています。