わが国では、学校検尿とともに集団検尿の一環として、三歳児検診の際に検尿が行なわれています。その数は、全国で年間90万人に上ります。
集団検尿の検査目的は、将来腎不全に至るような腎疾患の早期発見です。学校検尿ではIgA腎症を中心とする慢性腎炎、三歳児検尿の対象疾患は、 先天性腎尿路奇形(CAKUT)になります。CAKUTは、小児慢性腎臓病の原因疾患の半数以上を占め、1990年後半以降は、糸球体腎炎<CAKUTとなっています。 早期に発見すべきCAKUTの子どもは、人口1万人当たり1~5.5人と推測されています。
三歳児検尿は1965年から行なわれている歴史ある検査です。2007年に実施された全国調査では、98.5%の市町村で三歳児検尿が実施されていました。 しかし検査項目は様々で、蛋白尿99.9%潜血80.3%、尿糖88.1%、白血球14.7%でした。
1回のみのスクリーニングが70%、しかも有所見児に対する精密検診の方法が明確に決められている自治体はわずか25%でした。
北見市では、蛋白尿だけの検査です。尿蛋白(±)以上で再検査を行い、(+)以上の場合精密検査目的で、かかりつけ医の受診を勧めています。
(最近の検討で、三歳児検尿での潜血や白血球の検査の必要性がないことが示されています)
1次精密検査(かかりつけ医)では、血液検査(血清クレアチニン)、尿検査(尿蛋白/尿クレアチニン比)、尿β2ミクログロブリン/尿クレアチニン比)高血圧の有無などを調べます。
異常がある場合は、2次医療機関で超音波検査などのさらに詳しい検査を行うことになります。
表に示すように、過去5年間で異常を指摘された児はいませんでした。保健センターで再検査できなかった児もほとんどすべてがかかりつけ医で 検査されており、フォローアップ体制に問題はありません。
一方、最近尿蛋白だけのスクリーニング方法ではCAKUTの多くが見逃されてしまうという問題が指摘されています。その理由は、 CAKUTが有意の尿蛋白を呈さないことが多いこと、早朝尿がなかなか採取できず濃縮尿でのチェックが難しいなどのため、 尿蛋白だけでは不十分ではないかとされています。実際、CAKUTを早期発見するため、生後4カ月ですべての児に超音波検査を実施し、 実績をあげている自治体があります(神奈川県奏野市、伊勢原市など)。今、現行の三歳児検尿の在り方が問われているのかもしれません。