学校検尿は、1974年に始まり40年を超える歴史を持つ、世界でもまれなスクリーニング方法です。 小児慢性糸球体腎炎による慢性腎不全の発症が米国の1/4であること、学校検尿世代は明らかに 慢性腎不全の患者数が少ないことなどから、学校検尿の有用性が評価されています。
早朝尿を家庭で採取して、これを学校に集めて検診機関に委託、検査する方式が全国で行なわれています。 ほとんどの地域で、1回目と2回目の検査は検診機関で、2回続けて異常がみられた場合の精密検査は、 かかりつけ医を受診させるシステムをとっています。
H25年に行なわれた全国調査の 結果は、血尿・蛋白尿が小学生0・02%、中学生0・06%、蛋白尿単独は小学生0・12%、中学生0・44%、 血尿単独は小学生0・27%、中学生0・36%でした。学校検尿の最大の目的は、糸球体腎炎を発見する ことにあります。その頻度は、小学生で1万人に3~5人、中学生で5~10人とされています。
尿所見別の慢性腎疾患の確率は、蛋白尿+血尿で69・3%蛋白尿単独の場合9・4%、血尿単独で 4・7%でした。蛋白尿+血尿の慢性腎疾患のうち70%はIgA腎症とされています。このIgA腎症ですが、 最近の4剤によるカクテル療法の導入により、10年後の予後が著明に改善しており、早期発見、 早期治療の重要性が増しています。腎疾患はほとんどが無症状ですので、早期発見の観点から学校検尿の有用性は明らかです。
過去5年間で、蛋白尿+血尿は8人でした。この8人はすべて精密検査を受けており、現在も定期的に チェックされています。一方、精密検査の受診状況をみてみると、小学生で精密検査が必要とされた196人のうち80人 (40・8%)、 中学生171人のうち132人(77・2%)が精密検査を受けていませんでした。この中には以前精密検査を受けて いられる方も多く含まれているのでしょうが、大丈夫とかってに判断しているケースもありそうです。フォローアップ体制を見直してみる必要があります。