恐ろしげなタイトルになってしまいましたが、生徒の突然死を説明することで、学校心電図検診の大切さを理解していただけたらと思います。
現在、学校管理下で年間どのくらいの生徒が突然死しているのでしょうか?学校管理下というのは、朝家を出てから夕方帰宅するまでの登下校も 含まれています。学校管理下における死亡、事故はすべて日本体育・学校健康センターに届出されることになっているので、正確な実態を把握することができます。
学校管理下での死亡は、小、中、高校全体で毎年70~80件報告されています。
この数値は、登下校時の交通事故や熱中症による死亡などが含まれており、それらを除いた本当の意味での突然死は全体の約50%と
言われています。すなわち学校管理下での学童の突然死は毎年、全国で40件くらい認められていることになります。生来健康であった
(健康であると信じていた)子どもが突然亡くなってしまうことを考えると決して少ない数字ではないと思います。
原因は、心臓に起因した例が圧倒的に多く、小学生で約70%、中学生で約75%、高校生で約85%が心臓が原因で死亡しています。 男児が女児に比べて圧倒的に多くなっています。発生状況をみると、運動中に起こったものが50%、運動直後に起こったものが約15%、 全体の60~70%が運動に関係していました。中1、高1で発生頻度がとくに高くなっていますが、中、高での運動の量、質の急激な 変化に影響されているものと思われます。
心筋炎…大部分は種々のウイルスによります。心筋と同時に刺激伝導路も障害され、その結果として房室ブロック、心室性の不整脈によって突然死の原因となります。
不整脈…一部の限られた不整脈に突然死の危険性があります。とくにQT延長症候群は注意すべきで心電図検査をしない限り診断はできません。その他、完全房室ブロック、 心室頻拍、多形性心室性期外収縮なども突然死の原因となります。
心筋症…学童期には肥大型が圧倒的に多い。小児期には症状がないことが多く、大部分は心電図異常によって発見されます。
突然死の原因となる不整脈、心筋症などは、無症状の事が多く、心電図検査で初めて指摘されることがほとんどです。これらの疾患を発見すると いう意味において、学校心臓病検診はきわめて有用な手段であり、ひいては学校での突然死の予防につながっています。
AEDが学校に設置されるようになった平成16年以前には、毎年100件近い学童突然死がありました。確かにAEDの普及により死亡数は 半数程度に減少しAEDの効果は明らかです。しかし数字に表れないニアミス例(AEDの使用によって死に至らなかった例)の存在を忘れて はいけません。突然死をきたす疾患が決して少なくなっているというわけではないのです。学校心臓病検診(心電図検査)の重要性を 理解していただけたでしょうか。