2011年、マイコプラズマ感染の大流行がありました。その際に分離された菌のマクロライド系抗生物質(クラリス、クラリシッドなど)に対する耐性率は極めて高いもので、89.5%でした。
このよう現象は、日本、中国などのアジア諸国のみならず欧州でもみられています。これは外来で管理できるような場合はそれほど深刻ではありませんが、入院が必要な重症例では大きな問題となります。大人でよく使用されマイコプラズマに有効とされるニューキノロン系やテトラサイクリン系などの抗生物質は、副作用のため小児では使用できません。もちろん注射薬でも適切な薬がなく、とくに年少児において治療に困ることがあります。最近小児にも適応のあるニューキノロン系の抗生物質が出てきていますが、安易に使用できません。
肺炎にならなくても1ヶ月以上続く長引く咳の原因となります。特に年長児や大人ではこの傾向があり、自覚症状もあいまいで、微熱と倦怠感、咳が長期間続くことがあります。
まれですが、肺炎が重症化し抗菌薬で炎症を抑えることができないことがあります。他の細菌感染は菌によって直接的に肺組織にダメージを与えるわけですが、マイコプラズマ肺炎の病態の基本は、マイコプラズマに対する生体の免疫反応といわれています。普通はマイコプラズマを抗菌薬で叩けば免疫反応も収束し改善してきますが、一部の例で菌を叩いても炎症が治まらず、過剰で有害な免疫反応のため重症となることがあります。このようなケースでは、ステロイドの全身投与が有効となります。またマイコプラズマ感染で神経系や造血系のさまざまな合併症を伴うことがあります。この場合もステロイドの投与が考慮されます。
マイコプラズマ感染症は学童期に感染することが多く、出席停止期間も気になります。感染経路は、おもに飛沫感染ですが感染力はそれほど強いものではありません。適切な抗菌薬が投与され、解熱し、飛沫の原因となる咳がある程度改善していれば、登校してもよいものと思われます。