トキソプラズマは小さな原虫で、畑の土、ネコの糞、加熱が不十分な肉などに生息し、哺乳類にも 鳥類にも人にも寄生します。トキソプラズマには、全人類の10~80%が感染しているといわれています。 トキソプラズマの抗体保有率は、地域により差があり、フランスでは80%、中央ヨーロッパで40~50% と高く、北米(3~30%)、日本(東京近郊7%、南九州15%)、東南アジア(10%以下)で低くなっています。 これらの差は、食肉習慣やネコの抗体保有率の違い、衛生状態の相違などが複雑に関連していると考えられています。
トキソプラズマの抗体を持っていない妊婦さんが初めて感染した場合、胎児に水頭症や網膜脈絡膜炎 などの先天異常をきたし、発達障害や視力障害などの後障害を残してしまう可能性があります。 感染してもほとんどが症状がないため、妊娠中の抗体の検査で感染の有無を知ることになりますが、 妊娠してからの感染かどうか診断が難しいことがあります。また感染が疑わしい場合、抗生剤の治療を 行いますが、その効果も明確ではありません。平成20年までの3年間で16例のトキソプラズマ症(サイト メガロ160例)が確認されています。トキソプラズマ症を予防するため、妊婦さんは次のことに注意しましょう。
ヨーロッパでの検討ですが、抗体のない妊婦の初感染を最も強力に推定する危険因子は、
であり、ネコとの接触は危険因子ではありませんでした。日本でも同様な調査結果も出ています。 実際、最近わが国でも、馬刺しやユッケを食べて感染した妊婦さんから先天性トキソプラズマ症の 子どもが生まれています。妊婦さんは、加熱処理の不十分な肉の摂取を控え、土いじり後には十分手を洗うことがとくに重要です。