妊婦の初感染後、30%~50%の確率で胎内感染が起こりますが、そのうち症状があって出生する児は 5~10%とされています。最近、全国6都道県でおこなわれた調査で、わが国における先天性CMV感染の 頻度は0.31%、すなわち年間600人ほど症候性感染児が生まれていることが推測されます。さらに出生時 に症状がなかった感染児の約10%(300人)に遅発性の症状が出ると予測されます。従って、両者を合わせ ると、先天性CMV感染症の発症数は、出生児1000人に1人(年間約1000人)になると推定されています。 これはダウン症候群(約700人に1人)に準ずる重要性があることを示しています。ちなみに米国では、 その重要性はダウン症候群を凌いでいます。
ワクチンの実用化への道はまだ遠いため、未感染の女性は妊娠中の感染を防ぐため、以下のような 生活上の注意を守るよう米国疾病予防センター(CDC)は推奨しています。
一見したところ、どれも難しくなさそうですが、妊娠中毎日確実に実践してゆくことは、けっこう大変です。 実践のためには、自分自身がCMV未感染者であるかどうかはっきり知ること、そして先天性CMV感染症の恐ろしさ を知ることが重要です。
胎内治療はまだ期待できる成果はあがっていません。出生後の抗ウイルス薬治療が、聴力予後や神経運動 発達を改善させることが、米国による臨床研究により明らかにされました。さらに負担が大きい注射薬に代わる 経口薬による検討もなされてきています。とくに生後1カ月以内に治療を開始することによりさらなる効果が 期待され、以前に増して早期診断の重要性が指摘されています。赤ちゃん全員がスクリーニングの検査を受ける ことができる体制づくりが求められています。
一方、今最も重要なことは、妊婦さんは自分がCMVに対する免疫を持っているかどうか知ることです。 しかし妊婦検診にこの検査を盛り込んでいる医療機関はごくわずかですので、かかりつけの産科で相談してみて ください。2~3000円でできるはずです。免疫がない場合、上述した予防策をきちんと行う必要があります。