母子感染とは、母体からウィルスや細菌が赤ちゃんに感染することで、胎盤を通じた胎内感染、分娩時の産道感染のほか母乳を介した感染があります。
HTLV-1、HIV/AIDS、風疹、B型肝炎、梅毒、単純ヘルペス、サイトメガロ、トキソプラズマなどが知られています。これらの中で、最近マスコミにもよく取り上げられ、とくに注目されているサイトメガロウィルス、トキソプラズマ症について説明しましょう。
サイトメガロウィルス(CMV)は、昔からあるウィスルで従来多くの人が身体の中に持っています。ところが今、免疫を持たない人が増えています。
健康であれば感染してもほとんど症状が出ることはないのですが、妊娠しているときに初めて感染すると胎児に感染し、中枢神経障害や難聴などいろいろな障害を引き起こすことがあります。先天性CMV感染症は、現在先進国において、最も重要な先天性ウィルス感染症と考えられており、先天性の中枢神経障害の原因として、大きなインパクトを持っています。
以前は、対症療法しかなかったのですが、最近は抗ウィルス療法が効果があることがわかってきており、早期診断の重要性が増してきています。
すでに感染を受けている母親から生まれた子どもは、経産道的にまたは経母乳的に母親から感染しますが、発症することはありません。しかしその子どもは長年にわたって唾液や尿へ大量のCMVを排泄し、未感染の子どもに水平感染させていますが、健康な子どもに症状がでることはありません。現在、初感染妊婦の感染源として多くは、こうした子どもの唾液や尿から感染するのではないかと考えられています。
CMVに感染したことがない免疫をもたない女性は、30年前には4%程度でしたが、今ではおよそ30%にまで急増しています(図)。20代の女性に2人に1人が免疫を持っていないとさえいわれています。その理由は、子どもの遊びの形が変わり、子ども同士の接触が少なくなったり、また世の中が清潔志向になり消毒するあまり、子どものときに感染しないまま大人になるケースが増えているとされています。