乳児期早期の食物アレルギーやアトピー性皮膚炎の発症を予防できないか、いろいろな試みがなされています。
胎児への移行が問題となる妊娠8ヶ月からの食物アレルゲンの除去と発症予防効果について、これまで7つの詳細な検討が報告されています。2つの論文で、ある程度の除去効果が指摘されていますが、5つは全く予防効果はなかったとしています。2000年、米国はピーナツのみは妊娠中の除去を勧めていましたが、2008年にはその効果がないことから撤回しています。わが国でも、妊娠中の食事制限による児のアレルギー発症予防効果はないとしており、除去は勧めずバランスのとれた食事をするよう指導しています。
乳児のアトピー性皮膚炎では、児がまだ接種していない卵などの食品にも検査で陽性を示しやすく、母親からの影響が考えられてきました。授乳中の母親の除去食によるアトピー発症の予防に関して、多くの検討がなされています。結果はまちまちで、効果がないとするものから、乳幼児期のアトピーの発症を低下させるが10歳以降の他のアレルギー性疾患の発症率には関係がなかったという報告もあり、一定の見解が得られていません。新しい欧米のガイドラインは、米国では、湿疹へのある程度の効果はあるとしていますが、発症予防のための授乳中の母親の食事制限を推奨していません。日本でも同様の見解がなされています。母乳を通じて児に移行する抗原量は母体の摂取量の10~100万分の1程度のごくわずかであり、ほとんどの場合必要ないか、あっても児に比べ食事制限ははるかにゆるやかなもので十分です。
母乳栄養の方がアレルギーを起こしにくいとするもの、逆に発症しやすいとするもの、栄養法とは関係がないとするものなど、結論が出ていません。母乳中にアレルギーを抑制する物質がいくつかあることがわかっており、欧米でも日本でも生後6ヶ月までの完全母乳栄養が推奨されています。
米国などで、アレルギーのリスクの高い児については、6ヶ月以降の離乳食開始が勧められていましたが、最近再検討されています。欧州では、離乳食を遅らせることで食物アレルギーを予防できるというエビデンスはなく、生後4ヶ月からの開始を勧めています。生後早くから湿疹がひどい場合、離乳食を開始する前にアレルゲンを検査し、陽性の食物については離乳期は使用をひかえる必要がありますが、離乳食の開始を遅らせる必要はなさそうです。
前回述べたように、湿疹部位からアレルギーの原因物質が入り、食物アレルギーをひき起こすことがわかり、注目されています。生後早期からのスキンケアーが重要です。