医療先進国であるはずの日本が、ワクチンによる予防医療に関しては世界に20年遅れている現実があります。日本は完全にワクチン後進国なのです。
最近、ようやく子宮頸がん、ヒブ、肺炎球菌ワクチンなどの公費による接種(地域によっては一部自己負担あり)が始まりました。しかしこれらのワクチンも定期接種ではなく、いまだに任意接種の扱いのままです。もし仮に事故が起こった場合、両者間での救済の取り扱い、とくに救済額などに大きな差があります。また任意接種のままでは接種率の今以上の改善は期待できません。
水痘、おたふくかぜは、日本は毎年100万人の患者がでていると推計されていますが、任意接種であるワクチンの接種率は3~4割程度とされています。欧米ではワクチンの普及(定期接種化)で罹患率はかなり低く抑えられており、最近ではほとんど疾患をみることがなくなっています。
まさに予防に勝る良薬なしということですが、ワクチンによる医療経済効果という面からの分析も行われてきています。これは、Vaccine Preventable disease(VPD:ワクチンによって予防可能な疾患)を減らすことによる総医療費の削減効果を示すものであり、定期化によるワクチンの接種にかかる費用と疾患罹患時の医療費や保護者の生産性損失(例えば子どもの病気のため親が仕事、家事などを休むための経済的な損失など)を比較したものです。
最近、いろいろな報告がみられてきています。その前提条件によって結果が多少なり異なっていますが、表に示すようにワクチンの定期接種により大きな経済効果が得られることが指摘されています。ちなみにおたふくかぜワクチンでは230億円、ロタウィルスワクチンで303億円と試算されています。