平熱がどのくらいの場合に『低体温』というのかはっきり決められているわけではありません。とりあえず一般に小児の平熱が36.5~37度前後だとすると、36度未満を低体温といってさしつかえないでしょう。
子どもの低体温が注目されたのは、日本体育大学の正木教授が「子どものからだの調査''90」として、全国の保育園児から高校生を対象に行ったアンケート調査を平成2年に公表してからです。20年前の調査と比較して、朝の体温が36度に満たない子どもが非常に多くなっていることを指摘しました。
この原因はどのようにとらえられているのでしょう。
ひとつは、子どもの運動不足による基礎代謝量の低下が指摘されています。以前と比較し子どもの活動量が激減し、1日の必要エネルギー量は、小学校高学年で以前は1600~1800キロカロリーが標準だったものが、現在は1000キロカロリー前後の子どもも珍しくありません。
疲れやすい、だるいという子どもに、早寝早起きの励行と十分の運動により症状がとれてくるケースは少なくありません。これらの子どもの多くは、概して朝低体温の傾向にあります。
学校保健からの調査も一部で実施されており、東京都と岐阜県の報告によると両者に差はなく、朝の低体温は小学校高学年で30%、夜の低体温も15~20%に見られています。
生活調査との関係を見ていますが、夜型生活と運動不足の結果ではないかと推測しています。
幸いなことに、これらの低体温の子どもに病気といえるほどの症状はありません。しかし低体温と生活リズムとは相関があり、成人のデータですが、夜型生活が習慣化すると昼頃までの低体温化をもたらし、その時間帯の頭の働きが鈍くなり、夕方からは体温が朝方生活者より高めになり、寝つきが悪くなるという結果がでています。
子どもたちに多くなっている低体温現象や、自律神経の正常な発達を妨げているのは、夜更かし、朝寝坊といった生活リズムの乱れだけでなく、過保護、運動不足が大きく関係しているようです。
ますます少子化が進み、子どものペット化が顕著になるにつれての一種の文明病といえる現象かもしれません。子どもの自立を促し、運動不足を解消させ、規則正しい生活を送らすことが何より大切でしょう。
まれですが、元気そうに見えても体温が低くなる病気に甲状腺機能低下症があります。この場合、寒がる、活気が無い、便秘になりがち、皮膚の乾燥がひどい、身長の伸びが悪いなどの症状がみられます。診断は血液検査で比較的容易ですので、気になる方は、かかりつけ医に一度ご相談を。