屋外で遊ぶ機会が増える季節は、ダニの感染症に注意が必要です。ダニは草地に多く潜んでおり、普段は岩の影などにじっと 隠れていますが、人や動物が近づくと排泄するCO2を感知し、表面に出てきて体に取り付きます。とくに北海道はマダニが広く 生息しており、身近な公園などにもいます。皮膚に24時間程度くっついてから血を吸い始めます。マダニに吸血されても痛みも かゆみもないため気づかれにくく、血を吸ってダニがかなり肥大化した状態で発見されることもまれではありません。
マダニが媒介する細菌感染症として、以前からライム病が有名ですが、日本紅斑熱も注目されています。また最近、 マダニによるウイルス感染症として、重症熱性血小板減少症候群(SFTS)や、ダニ媒介性脳炎(TBE)が話題になりました。 今回は、北海道でとくに気になるライム病とダニ媒介性脳炎について概説します。
欧米では現在でも年間数万人のライム病が発生し、報告例も年々増加しています、日本では、1986年に初のライム病患者 が報告されて以来、現在までに数百人に上り、とくに北海道や長野県で多く発生しています。ライム病の病原体はライム病ボレ リアという細菌です。この細菌を有した野ネズミ、鳥などを吸血することで病原体を獲得したマダニが人を刺すことで感染します。 初期症状は刺された部位を中心とした皮膚の紅斑(遊走性)で、重くなると顔面マヒや関節炎、髄膜炎さらに痴ほうを起こします。 治療は抗菌薬が有効です。欧米の現状と比較して、本邦でのライム病報告数は少ないのですが、野ネズミやマダニの病原体保有率 は欧米なみとされており、潜在的にライム病が蔓延している可能性が高いとされています。
細菌、マダニが媒介するダニ媒介性脳炎(TBE)という病気が北海道を中心にマスコミで取り上げられました。TBEは、 ユーラシア大陸の広い地域で発生していて、年間1万人前後の患者が報告されています。TBEウイルスを保有したマダニに 吸血された場合、軽い症状を含めて症状が出るのは5〜30%、まれに脳炎で死亡したり、後障害を残すこともあります。
1993年北海道南部で国内初のTBE症例が確認、その後23年間は報告がありませんでしたが、2016年札幌市(死亡)、 2017年函館市(死亡)、2018年旭川市と北海道からの報告が相次いでいます。北海道の広域でTBEウイルスに感染歴 がある野生動物が見つかっています。まだTBEの認知度が低く、診断できる施設も限られています。今後、注意深く見てゆく必要があります。
可能な限り早く取り除く必要があります。その際、自分でマダニを引きはがすことはせず、必ず医療機関を受診し処置して もらいましょう。無理に虫体をはぎとると虫体がつぶれ菌が入ったり、マダニの刺口が皮膚の中に残り、感染を増悪させる場合があります。