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北見小児科医師が書いた子育てアドバイス

溶連菌感染症のギモン

現在、溶連菌感染症は迅速診断ができ、抗生剤の使用により、ほとんどが1日で解熱する医者にとって診断、 治療が容易な疾患となっています。しかし集団感染を起こしやすいためか、保育園や学校では異様に恐れられて います。なぜでしょうか?この疾患、特有の病態が関係しているのかもしれません。

溶連菌感染症は恐ろしい病気か?

原因がよくわからず治療が不十分な時代は、リウマチ熱や急性糸球体腎炎を発症する怖い病気でした。 現在、リウマチ熱は日本にはなく、急性糸球体腎炎も最近ではほとんど見られなくなっています。適切な治療 がなされれば今や怖い病気ではなく、過剰に恐れることはありません。手足の壊死等の症状が急速に進行し、 高い致死率から「人食いバクテリア」と恐れられている「劇症型溶連菌感染症」が最近話題になっています。 なぜ劇症化するのかよくわかっていないようですが、発症は高齢者に多くみられ、小児ではまずありません。

溶連菌は常在菌?

子どもが集団生活している場所では保菌者(菌をノドに持っているが発症しない)が5~10%存在します。 溶連菌にかかった児がでた場合、保菌者は数10%に増加します。100名の集団で1人発症した場合、数人が 発症し、数名は発症しないで保菌者になります。そして保菌者の30%は1ヶ月以上溶連菌を保菌し続けます。 また治療をしても10~20%は除菌されずに保菌者になるといわれています。さらに軽い咽頭炎であり、治療を 受けなかった児も保菌者になります。このように保菌者が多く存在し、なかなかなくすことができません。 保菌者に対し、治療する必要はありません。

発疹がでる場合とでない場合がありますが?

溶連菌感染症で発疹を伴う場合、猩紅熱と呼ばれます。頻度は大体、全体の3割くらいでしょうか。発熱 毒素(スーパー抗原A、B、C)を持つ溶連菌の感染で、それに対する抗体を持っていない人に発症します。 発疹があるから重症になりやすいということはありません。

なぜ長期間の抗生剤を服用しなければならないのですか?

抗生剤を10日間服用するのが一般的です。抗生剤を飲むと1~2日で症状は消失し、ノドの細菌数も減少 します。感染力はほとんどなくなり、登園、登校は可能となります。2~3日で治るわけですが、わずかでも 細菌が残っていると再燃しやすいとされています。また生き残りの細菌とのアレルギーや免疫反応による腎炎や 最近は紫斑病などとの関連も指摘されています。症状が改善した後もしっかり最後まで抗生剤を飲むことが大切です。

なぜ繰り返し起こすことがあるのですか?

溶連菌による咽頭炎を発症した児の10~20%が1年以内に再発します。1ヶ月以内の再発の90%は非除菌に よる再燃と考えられています。溶連菌の再感染が多い理由として①溶連菌の細胞壁にあるM蛋白(白血球の貧食 から守る作用)の多様性、北海道では10種類くらいの異なったM蛋白を持つ溶連菌があり、10回違う溶連菌に かかる可能性がある②迅速診断で早期に診断され、治療が行われるために、免疫が十分できなく何度も同じ菌 の再感染を起こす可能性③抗生剤の乱用による正常の細菌叢がなくなり、溶連菌が定着しやすくなる危険性など が推測されています。

家庭内の予防投与は必要か

最近の北海道での調査によると、予防投与は約60%でおこなわれていました。しかし、予防投与をおこなわ ない場合でも、家庭内での発症は5%しかありませんでした。家庭内への予防投与の必要性はなく、発症したら 治療すればよいという結論でした。

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