母乳を飲ませているお母さんから、市販のかぜ薬を飲んでよいかどうか質問されることがよくあります。また授乳中ということで医師から薬を全く処方されない場合や薬を飲んでいるので母乳を与えられないもの、と勝手に思い込んで中止しているケースもみられます。
授乳中のお母さんの薬の服用に関して、これは?と思うことがいろいろみられます。とくに、母乳をやめる必要がないのに中断してしまうことが多いようです。一時的にしろ母乳を中止することがきっかけになり、母乳から人工栄養になってしまうこともあります。
お母さんが服用した薬は、程度の差はありますが母乳中に出ます。しかし母乳中に移行する量は非常に少なく、ほとんどの薬が母親の飲んだ量の1%未満であるといわれています。日常、医薬品として使われる薬の大部分は、ごく少量のみが母乳中に出てゆくだけですので、赤ちゃんに影響を与えることはなく、たとえば抗生物質にしてもその可能性はまずありません。
しかし一般に使用される薬剤については大丈夫だと考えて良さそうですが、ごく一部ですが母乳を飲ませている間は、服用してはいけない薬があります。アメリカ小児科学会の薬物委員会は、授乳中の薬の安全性について、これまでに発表された数多くの論文を検討し、数年毎に報告しています。
それによると、授乳中の絶対禁忌として、「抗癌剤」「免疫抑制剤」「放射線医薬品」などをあげています。そのほか、一部の抗生物質を含め、授乳中に注意したほうがよい薬をいくつか指摘しています。しかしこれらは短期間の服用なら問題はないものと考えて良さそうです。抗てんかん薬、向精神薬などの神経系に作用する薬剤の長期にわたる服用は注意が必要ですが、これも短期間なら差し支えないでしょう。抗甲状腺剤も授乳中安全に飲める薬があります。
特殊な薬を除いて、一般に使用される薬剤、特にかぜ薬や抗生物質などの服用は、赤ちゃんに影響を及ぼすことはありません。授乳中だからといって、薬を飲むことにあまり神経質になる必要はないわけですが、一応かかりつけの医師に相談してみることが賢明です。
それでも疑問が残る場合は小児科医に相談してみてください。