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北見小児科医師が書いた子育てアドバイス

母乳と環境ホルモン

いろいろな農薬の使用や、身辺のゴミ消却から発生するダイオキシンが草木、動物を汚染し、その結果として人体の血中濃度を上昇させ、生殖能力にまで影響を及ぼしている可能性が指摘されています。
とくに母乳中には脂肪が多く含まれているので、母体に蓄積されたダイオキシンは、母乳を通じて赤ちゃんに移行します。母乳は果たして大丈夫なのでしょうか?

母乳中のダイオキシン濃度

平成6・7年度心身障害研究によると、母乳中のダイオキシン濃度は、母乳中の脂肪1g当たり平均26.6pgTEG(TEG=毒性当量)であり、平成9年のさらに詳しい検討では17.4と報告されています。
諸外国ではイギリス29~37、ドイツ28~37、カナダ16~23などであり、わが国とほぼ差はないようです。
大阪で保存されていた凍結母乳のダイオキシン濃度の測定によると、1974年の32.1から、1999年には16.3にほぼ半減しています。20年前と比較し、環境中のダイオキシン発生に対する規制も始まっていることから、現在母乳中のダイオキシン濃度はさらに低下しているものと思われます。

母乳中のダイオキシンの影響

諸外国で多くの検討がなされています。とくにオランダで詳細にわたる調査が行われています。オランダは、ほかのヨーロッパ諸国と比較するとダイオキシンによる汚染が深刻であり、母乳中の濃度も高いとされています。
工業化の進んだロッテルダムと農村地域からの400組の母子が選ばれ(半分は母乳栄養)、血液、母乳中のダイオキシン濃度、甲状腺ホルモン、成長、神経発達、免疫機能への影響などが検討されました。
その結果、2例の母乳児に甲状腺刺激ホルモンの増加(甲状腺機能は正常)1例に一過性の免疫機能の異常がみられたのみで大きな影響はみられていません。

ダイオキシンによる母乳汚染の問題は最近起こったわけではなく、母乳育ちの赤ちゃんは以前は現在よりももっと多量のダイオキシンに暴露されていたわけです。しかし少なくとも現在成人した人に異常があるわけではありません。「ダイオキシンが心配だから母乳をやめる」という必要はなく、これまでと同じように母乳を続けてください。

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