子どもの食物アレルギーの多くは、乳児期にアトピー性皮膚炎(AD)として発症します。
海外の報告では、AD児における食物アレルギーの合併は3~6割とされています。ADにおける食物の関与は、年齢とともに少なくなってゆきます。
最近、食物アレルギー発症について新たな説が注目されています。食物に対する感作は、皮膚のバリア機能の障害のある湿疹部位から始まる(経皮感作)という考えです。
これまで母親が食べた卵や牛乳などの原因物質(アレルゲン)が、妊娠中や母乳を通して赤ちゃんが体の中に取り込むことで症状が出ると考えられてきました。そのため、子どもの食物アレルギーの発症を予防するために、母親の食事制限をすることもありました。しかしその後の研究によって、妊娠中や授乳中の母親の食事制限や離乳食の開始を遅らせることなどの措置は、アレルギー発症の予防につながらないことが明らかになってきました。
食物アレルギーの赤ちゃんの多くは、乳児期早期から湿疹があります。湿疹による皮膚バリア機能の障害のため、容易に環境中のアレルゲンが皮膚に侵入して、アレルギー性の炎症を引き起こします。子どもを取り巻く環境中には食物アレルゲンが少なからず含まれているために、経口摂取していなくても皮膚から暴露されてしまいます。
また以前から、原因となる食物が口から少量入ることで、アレルギー反応が除々に抑えられていく(耐性を獲得する)という考えがあります。
バリアが障害された皮膚からの刺激が続いている一方で、母親を含めた過剰な食事制限は、経口的に得られる耐性を獲得していくという機能を失ってしまう可能性があり、食物除去をしてもいっこうによくならず、ますますアレルギーがひどくなるという皮肉な結果をもたらしていた危険性があります。
食物アレルギーに対する食事のポイントは、「正しい診断に基づいた必要最小限の除去」ということになりますが、それに先駆けて、ステロイド外用薬などを適切に使用し湿疹をできるだけ早期に治療し、皮膚からの感作を起こりにくくすることがとても重要となります。