人は乳幼児から成人まで何度もロタウィルスの感染を繰り返します。しかし感染を繰り返すと、次回以降の感染に際し、胃腸炎の症状が軽く済むこと、また何回か感染を繰り返すと、今まで感染したことがない違うタイプのウィルス株に対しても免疫ができることもわかりました。この繰り返す自然感染にみられる免疫応答のメカニズムを利用し、ロタウィルスワクチンが開発されました。
このワクチンの目的は、感染そのものを予防することではなく、入院や死亡したりする重症の胃腸炎になることを防ぐことにあります。この点が他のワクチンとの違いともいえそうです。
わが国では、平成23年7月にワクチンが承認され、11月から接種できるようになりました。現在、世界各国で承認されているワクチンは2つあります。日本で承認されたロタリックスⓇは、ウィルス胃腸炎にかかったアメリカの子どもの便から分離したウィルスをサルの細胞で何代も植え継ぐという方法で、もとのウィルスの毒性を弱めることに成功した生ワクチンです。
生後6週から6ヵ月までの期間に、1ヵ月以上あけて2回経口接種します。
約6万人のデータから予防効果を見た海外での試験では、ロタウィルス胃腸炎が79%減少し、うち重症例では90%の減少となり、ロタウィルス胃腸炎による入院も96%減少しました。国内での治験でもロタウィルス胃腸炎全体の予防効果は79・3%、重症例では91・6%と高い予防効果が得られています。
欧米を中心としたた100ヵ国以上で認可され、すでに5年以上使用されていますが、腸重積などの発症リスクを高めるなどの危険も否定され、高い安全性が確認されています。国内の検討で、一時的に光などに敏感になって不機嫌になりやすい「易刺檄性」が7%、軽い下痢が4%に見られたとされています。
我国の乳幼児における予防接種体制は欧米と大きく異なります。生ワクチンであるBCGが生後3ヵ月から5ヵ月の間に接種、生後2ヵ月からはヒブ、肺炎球菌ワクチンの接種も推奨されています。三種混合ワクチンも生後3ヵ月からやらなければなりません。
生ワクチンを接種すると原則4週間は次の予防接種ができず、不活化ワクチンの同時接種もあまり進んではいません。このような現状ではとても2~3ヵ月齢時に初回投与し、6ヵ月齢までに投与を終えなければならないロタウィルスワクチンの入り込む余地がありません。
小児科医とよくご相談下さい。また任意接種であり、1回の接種に1万数千円かかり、経済的な負担も大きいことも大きな問題と言えそうです。