急性肝炎を来すウイルスは、A~E型の5種類の肝炎ウイルスの他に、G型、サイトメガロ、EBウイルスなどが知られています。
このうち感染予防のためワクチンが使用されているのは、A型とB型のみです。B型肝炎ウイルス(HBV)による感染防止の目的は、持続感染者(キャリア)の発生を防止し、HBVキャリア状態から発症する肝硬変、肝がんをなくすことです。キャリアとなる主な感染経路は、お産による母親から新生児への垂直感染(母子感染)と考えられており、この母子感染の予防が最も重要なこととなります。
1985年から全国の妊婦のHB抗原検査が始まり、1986年からHBe抗原陽性妊婦から出生した赤ちゃんのみを対象にした予防措置が行われました。さらに1995年からは、HBeのみならずHB抗原陽性のすべての母親から出生した新生児に対して予防措置が取られるようになっています。近年、日本における妊婦のHBs抗原の陽性率は0.3~0.5%程度に減少しているようですが、児への感染防御のためすみやかに以下の対策がとられています。
方法は、図に示すようにHBヒト免疫グロブリンを2回とワクチンを3回投与します。生後6ヵ月にHBs抗原、抗体をチェックし、抗体が陰性の場合HBワクチンの追加接種をします。
この対策によって、母子感染による新生児のHBVキャリア率は約10分の1に減少しました。顕著な効果といえますが、予防不成功例が10%くらいみられています。その原因として、出生時にすでに感染が認められる場合(胎内感染)、HBワクチン不応例などがあるようですが、多くは予防措置がきちんと行われていないことに起因しているようです。確実な実施が望まれています。