乳幼児期の子どもたちの多くは、鼻の奥に、普段から肺炎球菌を持っています。その割合は、集団保育をしている0~3歳の子どもでは約80%が保菌しているといわれています。
その中でウイルス感染などを契機に、感染症を起こしてきます。なかでも急性肺炎や急性中耳炎は日常の診療でよく経験しますが、その重要な原因菌が肺炎球菌です。
小児の気管支炎、肺炎の原因菌はインフルエンザ菌に次いで2番目に多く、乳幼児の急性中耳炎の原因菌もインフルエンザ菌、肺炎球菌の順でそれぞれ30~40%を占めています。(ここでのインフルエンザ菌は、前述したヒブ(インフルエンザb菌)ではありません。)より重症の細菌性髄膜炎もヒブに次いで多く(2割)、菌血症においては、肺炎球菌が最も多く全体の72%となっています。
肺炎球菌もヒブと同じように薬剤耐性化が問題になっています。
2000年に子どもたちから検出された肺炎球菌の約80%がペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP)でした。最近は耐性化率はいくらか改善したようですが、それでも半数近くがペニシリン系薬のみならず他の抗生剤にも感受性の低下を認めています。もともと抗菌薬の移行性がよくない上にPRSPが原因となった細菌性髄膜炎や中耳炎では難治化、重症化が大きな問題になっており、対策の1つとしてワクチンの導入が強く望まれていました。
肺炎球菌には93の種類(血清型)があります。このうち7つの血清型で、乳幼児の敗血症、髄膜炎の80%を、中耳炎の児から検出された株の60%を占めています。
子どもたちに影響の大きいこれら7つのタイプの菌に対し、ワクチンが開発されました。(7価のワクチン)このワクチンでカバーできる血清型の割合は、肺炎で71%、中耳炎で63%、髄膜炎で76%と推定されています。2000年に米国で認可され、定期接種に組み込まれました。すでに現在、世界中100ヵ国以上で使用されています。
一方で、このワクチンが最も普及しているアメリカでは、2歳以下の重症の肺炎球菌感染症は減少したもののワクチン以外の血清型(とくに19A型)による感染が増加してきています。こうした傾向に対して、その後13価のワクチンが開発され、現在国内外で臨床試験が進められています。H23年2月から日本でも7価ワクチンの無料接種が始まりましたが、近い将来13価のワクチンに変更されるかもしれません。
H25年11月から、13価のワクチン(プレベナー)に変更になりました。