肛門にぽっこりイボのようなでっぱりがあるのに気づき驚いて受診したり、オムツに 血がついてあわてて受診されるケースがよく見られます。離乳食がすすんできた生後 7ヶ月頃からうんちの時、痛がる子がでてきます。毎日出ていた便が3日さらに1週間に 1回しかでなくなったとか、硬いコロコロの便しかでないという赤ちゃんが多くなります。
硬い便が出るときに肛門の粘膜や皮膚が切れて出血します。肛門の裂け目を裂肛(切れ痔) といいます。赤ちゃんの血便の原因として最も多いものです。肛門の粘膜にできた傷は ふさがるのが早く、外から見てもわかりにくいことが多いのですが、排便のたびに繰り返して 裂けると、次第に裂け目が深くなり炎症を起こします。痛みのために便をするのをいやがる ようになり、便がでなくなるとさらに便が硬くなり排便のたびに出血したり、痛みが強くなる という悪循環(便秘→硬便→肛門が切れる→排便時の痛み→便をこらえる→さらに便秘)に 陥ります。肛門粘膜の裂傷と炎症が繰り返されるうちに、裂け目のまわりの皮膚が「イボ」 のように盛り上がってきます。これは「見張りイボ」と呼ばれる肛門のひだが膨れ上がった 状態で、ほかに尖兵ポリープ、皮膚垂とも呼ばれています。
男の子にも起こりますが、ほとんどが女の子です。女の子のほうが便秘になるのが多いから かもしれません。離乳期の7ヶ月頃から4歳くらいまで見られます。
肛門を左右に開いてみると、でっぱりの下に皮膚が切れているのがわかります。でっぱりは 0時の方向に多く、ついで6時の方向に見られます。
痛んだ肛門の粘膜を治す軟膏を処方しますが、軟膏だけでは治りません。便秘で便が硬いのが 原因のわけですから便秘の治療が必要です。離乳期でもあり、大きな子供の便秘の主因である 生活リズムの乱れや食事の内容の偏りなどとの関連性はないことが多いようです。マイルドな 下剤を使用し、やわらかな便がでるように排便のコントロールをする必要があります。軟便に なって刺激がなくなれば見張りイボは消失します。痔の軟膏と便秘の治療で、時間はかかるかも しれませんが必ず治ってゆきます。 手術の必要はありません。治療により裂肛は早めに治りますが、イボは小さくなるのにしばらく かかります。便が硬くなるとまた切れて再発することもあるので、裂肛が治った後もしばらく 便秘の治療を続けていく必要があります。
裂肛でみられる「見張りイボ」前方、後方の矢印の部分に皮膚の腫れとしてみられる