日本でも子宮頸がんワクチンの公費による接種が、平成23年2月から高校2年生を対象に始まりました。
しかし予想をこえる一気の需要に供給が追いつかず、4月から一時休止、安定供給の見通しがついた6月に再開され、7月には接種対象が拡げられ、中学1・2・3年生、高校1年生にも実施されました。平成24年度からは中学1年生のみが対象となります。もちろん女児だけの接種となります。
最近若い女性に急増している子宮頸がんは、子宮の入り口付近にできるがんで、日本で毎年1万5千人(7千人の上皮内がんを含む)が発症し、約3500人が死亡しています。
子宮頸がんは、ヒトパピローマウィルス(HPV)の感染が原因とされています。とくにHPV16、18型は最も検出頻度が高く、16種類ほどある発がん性HPVの67.1%を占めています。
子宮頸部へのHPV感染は、ほとんどが性交渉によるもので、性体験のある女性の約80%は一度は感染するといわれている「よくあるウィルス感染」です。感染しても、ほとんどの場合一過性の感染で自然に消えてしまいます。
しかし感染が長期間続くと、ごく一部のケースで数~数十年の前がん病変を経て、子宮頸がんが発生します。現在では、子宮頸がんのほとんどすべてがこのウィルスの感染が原因であることが明らかとなっています。
現在日本で使用されているワクチンは、HPV16および18型のウィルス粒子を精製した非感染症の不活化のワクチンです。HPVの自然感染では抗体の産生が十分ではなく、何度も感染を繰り返します。少し難しい話ですが、ワクチンの場合、ワクチンにより誘導された血液中抗HPV・IgG抗体が中和抗体として作用し、発がん性HPVの持続的な感染を長く予防します。なお平成23年11月からは、尖圭コンジローマの起因ウィルスであるHPV6、11型にも対応した4価のワクチンが出てきていますが、子宮頸がんの予防効果に両者の差はありません。
数万人の臨床試験で、ワクチンによるこの2種類のHPVに対する持続的な感染の予防効果とがん発生予防効果は、ほぼ100%です。自然感染と比較して、ワクチンによる抗体価の上昇は十数倍高い数値となり、長期間持続します。接種後20年間は有効とされています。とくに10~15歳では高い抗体価が得られます。また性体験前の接種が一番高い効果が得られると考えられています。日本ですべての12歳の女児に接種が行われれば、子宮頸がんの発生および死亡は70%抑制することができます。