ヒブとは、インフルエンザ桿菌(かんきん)b型という細菌のことです。最初に発見された時にインフルエンザ感染者から発見されたため、インフルエンザ菌という名前がついたわけですが、冬に流行するインフルエンザウイルスとは全く異なります。
インフルエンザ菌の中でも莢膜(きょうまく)を持つ種類は、重症の感染症を起こすタイプで、そのほとんどがタイプ b型(ヒブ)とされています。
ヒブは、健康な5歳未満の乳幼児の数%から10%以上で鼻や咽頭に住み着いています。そして3歳を過ぎると、特に症状を起こすことなく、ほとんどの子どもは自然抗体を持つようになるといわれています。
しかしこの中で、髄膜炎や喉頭蓋炎、敗血症などの重症感染症を起こすことがあります。つまり鼻やのどの奥にいる菌が血液の中に入り込み、さらに脳を守るバリアーを破って髄液の中にまで侵入すると髄膜炎を起こします。
ヒブによる重症感染症を起こす乳幼児は免疫不全などの特別なお子さんではなく、0~3歳くらいまでの健康なお子さんの誰もがヒブ髄膜炎にかかる可能性があるわけです。
恐い細菌性髄膜炎の原因菌の約6割がヒブ、そして2割が肺炎球菌です。とくに本来元気なお子さんでみますと、この2つの菌が髄膜炎のほとんどの原因菌となります。
1年間に約800人がヒブによる重症感染症にかかっており、そのうち600人は髄膜炎を発症しています。ヒブによる髄膜炎の死亡率は約5%で、てんかん、聴力障害などの後遺症が約25%とされています。毎年200人近い乳幼児が不幸な転機をとっているわけです。
ヒブ髄膜炎の初期症状は軽い場合があり、カゼや胃腸炎との区別がつきにくいことが多く、治療が遅れてしまうことがしばしば見られます。さらに髄膜炎には髄液への薬の移行がよいアンピシリンと呼ばれる抗生物質を注射して治療するのが基本ですが、最近ヒブに対する薬剤の耐性化が進み、抗生物質が効かないものが急激に多くなっており、治療が難しくなっています。
早期診断が困難で、治療もむずかしいヒブによる髄膜炎をほぼ完全に予防する手段はワクチン以外にはありません。