おたふくかぜ(流行性耳下腺炎…ムンプス)は、集団生活に入った4~6才ころに多くかかります。潜伏期間は、2~3週間です。最初は耳の下の痛みを訴え、翌日には腫れてきます。
耳下腺腫脹は年少児では数日間、中学生以上は10日間ほど持続します。
耳下腺腫脹が始まる3日前からウイルスが出ており、耳下腺腫脹後5日ごろまでウイルスが排泄されます。学校や園を休む期間は、耳下腺腫脹が改善するまでの7日間程度となります。
おたふくの合併症として、頻度が高いのは無菌性髄膜炎です(3~10%)。頭痛などの症状がなくても髄液を調べてみると約半数が炎症を起こしているとされています。
あまり知られていませんが、難聴も比較的頻度が高い合併症です。
ほとんどが片側ですが、感音性難聴で治療しても改善することは少なく、大変恐ろしい合併症といえます。その頻度は400~1000人に1人です。
年長児や成人ほど、無菌性髄膜炎や難聴を合併する頻度が高くなります。
思春期以降におたふくかぜにかかると、男性では睾丸炎、女性は乳腺炎や卵巣炎を合併することがあります。睾丸炎は思春期以降の男性の25%にみられ、両側の場合は全体の10%くらいです。睾丸炎を合併すると、その後精子の数は減少するとされていますが、不妊の原因となることはきわめてまれです。
ワクチンの発症予防効果は、75~90%です。
多くの先進国では2回のおたふくかぜワクチンの定期接種が行われており、2回接種すると発症予防効果は90%以上になります。ワクチンを受けていても園などでおたふくかぜが流行するとおたふくかぜに罹患することがあります。ワクチンを接種していると、症状は軽いことが多く、耳下腺が腫脹する期間は短くなります。無菌性髄膜炎を合併する頻度も10分の1以下になります。
おたふくかぜワクチンは病原性を弱めたウイルスを使用しているため、ムンプスウイルスの特徴である唾液腺や髄液で増殖しやすい性格を少し残しています。そのため接種後、耳下腺の痛みを訴えたり腫脹することがあるとされていますが、その頻度は非常にまれで私は経験していません。もちろん人に感染することはありません。
ワクチンを1回定期接種している国では、おたふくかぜの患者が90%減少し、2回定期接種している国では99%減少しています。日本でおたふくかぜワクチンを定期接種にすると、年間400~425億円の医療経済上のメリットがあるとされています。定期化に向けて検討が進められており、近い将来実現するかもしれません